大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)596号 判決

判決

大阪市西淀川区竹島町八四五

控訴人

石 田 外三郎

豊中市洲到止一二四

被控訴人

長 友   聡

右訴訟代理人弁護土

図 師 親 徳

蔦 川   毅

主文

原判決はつぎのとおり変更する。控訴人は被控訴人に対し金二四三、二五〇円及び、内金一五〇、〇〇〇円に対する昭和三三年四月二五日から支払済まで年一割八分の割合の金員、内金三〇、〇〇〇円に対する昭和三三年二月一五日から支払済まで年二割の割合の金員、内金二六、五〇〇円に対する昭和三三年四月二五日から、内金三六、七五〇円に対する昭和三三年八月一日から各支払済まで年六分の割合の金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通し、これを二〇分し、その一を被控訴人、その余を控訴人の負担とする。本判決は金八〇、〇〇〇円の担保を供するときは被控訴人勝訴の部分に限り仮りに執行できる。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、

被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

被控訴人の主張は、以下に補充訂正する外、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

被控訴人は、

「被控訴人は、控訴人の振出した左記持参人払式小切手一通(本件小切手)の所持人である。

金額 一六、八〇〇円

振出日 昭和三三年五月三〇日

振出地 大阪市

支払人 大阪市東淀川区十三西之町一丁目 株式会社福徳相互銀行十三支店

被控訴人は昭和三三年五月三〇日本件小切手を支払場所において支払人に呈示

よつて被控訴人は本件小切手に左記支払拒絶宣言の記載を受けた。

「六月九日本小切手呈示受けましたが左の理由により支払出来ません。

取引なし

大阪市東淀川区十三西之町一丁目五七番地

株式会社福徳相互銀行十三支店

支店長 田中静男」

すなわち、右支払拒絶宣言の記載に日附の附記がない。

控訴人主張の抗弁事実はこれを否認する。」

と述べ、

控訴人は、

「被控訴人主張の請求原因事実は全部これを認める。

控訴人は被控訴人に対し本件債務の弁済として一六回に亘り合計金一九四、四〇〇円を支払い、本件債務の内弁済期日の早いものから順次元利金の弁済に充当をしたから昭和三三年四月二五日借受の金一五〇、〇〇〇円の債務中八〇、〇〇〇円の債務が残存するのみである。」

と述べ、

証拠(省略)

理由

被控訴人主張の請求原因事実は控訴人の認めるところである。右事実によれば、本件小切手の支払拒絶宣言の記載には、

「六月九日本小切手呈示受けましたが左の理由により支払出来ません

取引なし

大阪市東淀川区十三

西之町一丁目五七番地

株式会社福徳相互銀行十三支店

支店長 田中静男」

とあるのみで、右宣言記載の日附がない。

小切手の支払拒絶による遡求の要件たる拒絶宣言は、原則として呈示期間経過前に作成することを要し、例外として期間の末日に呈示があつたときはこれに次ぐ第一の取引日中に作成することを要する(小切手法第四〇条)。従つて小切手法第三九条第二号所定の日附記載の要件は右期間遵守の証明のために規定された重要な要件であつて、日附の記載を欠く支払人の宣言は遡求の要件を充足しないものと解するのが相当である。

従つて被控訴人の控訴人に対する本件小切手金及びこれに対する利息請求部分は失当であるから棄却を免れない。

控訴人主張の弁済の抗弁に一部符合する当審証人入谷省三の証言は容易に信用し難く、他に右抗弁事実を認めるのに足る証拠がないから、右抗弁は採用できない。

従つて被控訴人の控訴人に対する本件小切手及びこれに対する利息請求を除くその余の請求は正当であるからこれを認容すべきものである。

よつて原判決を変更し、民事訴訟法第九二条第九六号第一九六条を適用し主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第八民事部

裁判長裁判官 石 井 末 一

裁判官 小 西   勝

裁判官 井野口   勤

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例